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ビカクシダの板付け:用土・板・固定・最初の2週間
板付けは植物を板に留める作業ではなく、その株の今後十年の姿を決める判断です。用土の配合、板の選び方、固定の方法、そして板付け後2週間の観察点をまとめました。
板付けは、その株の十年後の姿を決める作業です
ビカクシダは着生植物です。自生地では幹や枝を貯水葉で何層にも包み、その内側に根を伸ばします。板付けは、その支えを人の手で作り直すこと。貯水葉が板を包んでしまえば、株はもう動かせません。だから、板付けの時に決めた向き・高さ・用土は、何年もその株を形づくり続けます。
鉢植えでも枯れはしませんが、貯水葉が貼り付く相手がなく、株姿は締まりません。整った冠と垂れ下がる胞子葉を見たいなら、板付けは避けて通れない工程です。
用土:水苔を基本に、種ごとに通気を調整する
基本は水苔(ミズゴケ)です。水で戻し、滴らない程度に絞り、しっかりした半球にまとめます。ここが根の住まいになります。
差が出るのは通気性です。蒸れに弱いリドレイやベイチーは水苔を少なめにし、バークやヘゴ屑を混ぜて水が早く抜けるようにします。根が旺盛で湿り気を好むワンダエは厚めでも構いません。迷ったら乾き気味に。乾いた板は浸せば戻りますが、湿りっぱなしの板は成長点を失います。
板:ヘゴ、木板、コルク
ヘゴ板は通気性と保水性があり根も掴みやすい素材ですが、ゆっくり分解し、輸出入に規制のある国もあります。木板(杉、焼き杉、パインなど)は長持ちして見た目もきれいですが、水苔の裏に排水の隙間か穴が必要です。コルクは軽く腐りにくく、小型株やウィリンキーのドワーフ系に向いています。
板は、思っているより一回り大きく。コロナリウムやワンダエの成株は水を含めば数キロになります。吊り金具と壁の耐荷重は、必要になる前に考えておきます。板付け美学とは飾ることではなく、十年育てられる額縁を選ぶことです。
向き:貯水葉の冠を上に
貯水葉の先端には、鋭く鋸歯状に尖った冠があります。LDS ではこれを刺尖冠と呼んでいます。この向きが、株の伸びていく向きです。成長点を水苔の球の中央よりやや上に置き、冠を上に向け、株全体を数度前に傾けて、水が冠に溜まらず流れ落ちるようにします。ここを間違えると、どんな水やりでも取り返せません。
固定:留めるのは用土であって、株ではありません
釣り糸、綿糸、不織布のテープなどを水苔の球に回し、手で押しても動かないところまで締めます。糸は成長点と出かけの新葉にかけないこと。貯水葉は一季節のうちに糸を覆い隠します。タッカーや釘も使えますが、成長点から十分離れた位置に打ちます。
板付け後の2週間:水を与えず、観察し、動かさない
板付けの日、水苔はすでに湿っています。そこから1〜2週間は水を与えません。やや乾いた環境が、根を外へ探しに行かせます。明るい散光と動く空気のある場所に置き、直射日光と雨は避けます。板を動かさず、肥料も与えません。
見るところは二つ。貯水葉の縁に新しい緑が出ているか、胞子葉が垂れずに張りを保っているか。古い葉が少し縮むのは正常です。葉が柔らかく黒くなるのは異常です。新しい貯水葉が板に貼り付き始めたら、根が掴んだ証拠。そこで初めて定着したと言えます。
板替えの時期
板替えを考えるのは、貯水葉が板を完全に包んだ時、水苔が崩れた時、新葉が前の葉より小さくなった時、子株が増えて親株が弱った時だけです。健康に育っている株を、きれいな板に替えたいという理由で動かさないでください。適期は成長期に入る前の早春です。量産ではなく、育成。定着した株をそっとしておく忍耐も、その一部です。
よくある質問
板付けはいつ、どの大きさからできますか?
自分の貯水葉が一枚以上あり、根が用土を掴める状態になれば可能です。手のひら大のスポア株や、貯水葉を持った子株が目安。時期は春から初夏が最も安定し、寒波と盛夏の蒸れる時期は避けます。
板付け後の水やりはいつから?
板付け後1〜2週間は与えません。水苔は板付け時にすでに湿っており、やや乾き気味の方が根が外へ伸びます。その後は用土が乾いてからたっぷりと。最初の一か月は乾き気味が安全で、毎日の霧吹きは逆効果です。
板は杉・コルク・ヘゴのどれがいいですか?
蒸れに弱い種や初めての板付けにはヘゴ板が安全で、根も掴みやすい。杉などの木板は長持ちして見た目がきれいですが、水苔の裏に排水の隙間が要ります。コルクは小型種やドワーフ向き。板は今の株より一回り大きく。
水苔はどれくらいで交換しますか?
定期交換は不要です。水苔が崩れて泥状になった、水やり後に何日も乾かない、新葉が小さくなり続ける、この時だけ替えます。順調な板付け株は何年も動かさず、貯水葉が古い用土を自ら包み込みます。
鉢植えのままでも育ちますか?
枯れはしませんが、貯水葉が貼り付く相手がなく株姿が締まらず、冠の形も整いません。小さな苗の一時的な管理には鉢でも構いませんが、本来の姿を見るなら最終的に板付けが必要です。
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