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ビカクシダの板付け前に:道具・用土・板・向き
板付けの前に、道具、種ごとの水苔の配合、ヘゴ・木板・コルクの選び方、成長点の向きの決め方をまとめました。実際の固定と板付け後の管理は続く二本の記事で扱います。

板付けは、その株の十年後の姿を決める作業です
ビカクシダ(Platycerium)は着生植物です。自生地では幹や枝を貯水葉で何層にも包み、その内側に根を伸ばします。板付けは、その支えを人の手で作り直すこと。貯水葉が板を包んでしまえば、株はもう動かせません。だから、板付けの時に決めた向き・高さ・用土は、何年もその株を形づくり続けます。
鉢植えでも枯れはしませんが、貯水葉が貼り付く相手がなく、株姿は締まりません。整った冠と垂れ下がる胞子葉を見たいなら、板付けは避けて通れない工程です。
用意するもの
始める前に道具を揃えます。戻して絞った水苔、水苔ボールの中央に全体の五分の一ほど混ぜるヤシガラ繊維かバーク(通気のため)、裏に通気穴のある木板かヘゴ板、5号前後の透明な釣り糸(細すぎると手を切ります)、ステンレスネジ二本、ハサミ、丸く整えたいなら成形用のボウル、そして品種名を記すネームプレート。
用土:水苔を基本に、種ごとに通気を調整する
基本は水苔(ミズゴケ)です。水で戻し、滴らない程度に絞り、しっかりした半球にまとめます。ここが根の住まいになります。
差が出るのは通気性です。蒸れに弱いリドレイやベイチーは水苔を少なめにし、バークやヘゴ屑を混ぜて水が早く抜けるようにします。根が旺盛で湿り気を好むワンダエは厚めでも構いません。迷ったら乾き気味に。乾いた板は浸せば戻りますが、湿りっぱなしの板は成長点を失います。
板:ヘゴ、木板、コルク
ヘゴ板は通気性と保水性があり根も掴みやすい素材ですが、ゆっくり分解し、輸出入に規制のある国もあります。木板(杉、焼き杉、パインなど)は長持ちして見た目もきれいですが、水苔の裏に排水の隙間か穴が必要です。コルクは軽く腐りにくく、小型株やウィリンキーのドワーフ系に向いています。ステンレスのバスケットも選択肢です。網目から根が四方に伸び、通気と排水がよく、大きくなっても移し替えを急ぐ必要がありません。側面と底に水苔をしっかり詰め、中層にバーク、緩効性肥料を薄い水苔で覆ってから株を載せ、大株はアルミ線を網に通し、小株は釣り糸で巻き留めます。入手したばかりの株は、まず簡単な網材を仮の板として使い、新葉が続けて出るのを確認してから正式な板に移してもかまいません。手元にある物も使えます。使わなくなった木のまな板はそのまま板になり、古い額縁の裏にプラスチックの網板を打ち付け、表に柔らかいネットを張れば、四方から通気する網袋になります。湿度が高く風通しの悪い場所に向いています。
板は、思っているより一回り大きく。コロナリウムやワンダエの成株は水を含めば数キロになります。吊り金具と壁の耐荷重は、必要になる前に考えておきます。板付け美学とは飾ることではなく、十年育てられる額縁を選ぶことです。
向き:貯水葉の冠を上に
貯水葉の先端には、鋭く鋸歯状に尖った冠があります。LDS ではこれを刺尖冠と呼んでいます。この向きが、株の伸びていく向きです。成長点を水苔の球の中央よりやや上に置き、冠を上に向け、株全体を数度前に傾けて、水が冠に溜まらず流れ落ちるようにします。ここを間違えると、どんな水やりでも取り返せません。どちらが上か分からないときは芽を探します。芽と形になりつつある貯水葉が上、開いた胞子葉は下に垂れます。逆さまに付けてしまったら(台湾の愛好家のいう「倒頭栽」)、板付けしたばかりで根がまだ付いていなければ糸を解いて向きを直し、付け直します。何か月も経って根が張っているなら根の塊はいじらず、板ごと掛ける向きを変えて成長点を上に戻します。
成長点が両端にある時
根茎の上下どちらにも成長点がある場合、感覚で向きを決めないでください。まず平置きにし、いつも通り水と光を与えて約一か月様子を見て、どちらが実際に新葉を出しているか確認します。新葉を出している方を主株とし、板付け時はそちらを上に向けます。もう一方は根茎を少し付けて切り離し、子株として育てます。一か月経っても動きがない方は止まったものとみなし、もう一方を主株として板付けします。二つの成長点を長期間同じ株に残すのは避けてください。互いに養分を奪い合います。
板付けの実際の手順はビカクシダ板付けの実際を、板付け後の管理は板付けのあとをご覧ください。
よくある質問
板付けはいつ、どの大きさからできますか?
自分の貯水葉が一枚以上あり、根が用土を掴める状態になれば可能です。手のひら大のスポア株や、貯水葉を持った子株が目安。時期は成長が速く穏やかな時期を選び、台湾では蒸し暑さが収まった初秋が目安で、寒波は避けます。詳しい三つの目安はビカクシダはいつ板付けする?をご覧ください。
板は杉・コルク・ヘゴのどれがいいですか?
蒸れに弱い種や初めての板付けにはヘゴ板が安全で、根も掴みやすい。杉などの木板は長持ちして見た目がきれいですが、水苔の裏に排水の隙間が要ります。コルクは小型種やドワーフ向き。板は今の株より一回り大きく。合板や貼り合わせた集成材は、長く湿気にさらされると接着面がはがれてくるので避けます。木枠に金属メッシュを張った板は、実際に水苔を入れる内枠の寸法で選び、メッシュは錆びない 304 ステンレスにします。再生プラスチックを組み合わせるモジュール式の板もあり、腐らず、株が大きくなれば外側にパネルを足せるので板替えが要りません。ただしプラスチックは水を吸わず、含水はすべて用土しだいなので、替えてから数週間は重さを量って水やりのリズムをつかみます。
鉢植えのままでも育ちますか?
枯れはしませんが、貯水葉が貼り付く相手がなく株姿が締まらず、冠の形も整いません。小さな苗の一時的な管理には鉢でも構いませんが、本来の姿を見るなら最終的に板付けが必要です。
新しい貯水葉が古い貯水葉と違う方向を向いています。どちらに合わせますか?
いちばん新しく形になった貯水葉に合わせます。古い貯水葉は株の以前の姿勢を記録しているだけで、多くは鉢で育てている間や移植・板替えのときに向きが変わり、新しい芽が今の光と重力に合わせて向きを決め直したものです。新しい貯水葉の中心線がはっきり傾いているなら、株か板ごとその方向へ回し、左右対称で芽が上に来るように戻します。少しずれている程度で株がよく育っていれば、糸を切って留め直す必要はありません。貯水葉の下半分が上半分より早く育ち、全体が下を向いたように見えることがありますが、たいてい向きの問題ではないので、次の貯水葉が開いてから見直します。
板付けの前に、成長点の位置と向きはどう見分けますか?
胞子葉の並び方を見ます。胞子葉は左、右と交互に出てくるので、それが作る中心の線をたどって上へ行くと、いちばん上が成長点です。新しい葉ほど成長点の近くにあり、古い葉ほど外側の下のほうにあります。小苗や外したばかりの子株は葉が少なく、左右交互の並びがわかりません。その場合は、いちばん最近出た葉(胞子葉でも貯水葉でも)がどこから出てきたかを探します。そこが成長点です。わかったら成長点を上にして、株全体をやや前に傾けてから縛り始めます。
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